X-Pro3は“撮ること”を最大限に追求したカメラで、デジカメでは当たり前になっている背面モニターを隠し、ファインダーを覗いて写真を撮る前提に設計されている。そのため、ファインダー「アドバンストハイブリッドマルチビューファインダー」を採用し、EVFとOVFの切り替えが可能になっている。それでいてフィルムシミュレーションの機能も“フィルムを交換している感覚”に近づけるために背面にサブモニターを設け、往年のフィルムカメラに付いていたフィルムのパッケージをちぎって差し込む用のホルダーを模したデザインになっている。電源OFF時にも省電力でフィルムシミュレーションの表示ができるようにLCDの液晶ディスプレイを採用。LCD用にすべてのフィルムシミュレーションのデザインを128×128ドット絵でひとつずつつくりあげたというから企画チームの本気を伺える。
LCD液晶の話は富士フィルム公式サイト「X-Pro3 Stories, #1 サブLCD」でも紹介されているのでぜひこちらも読んでいただきたい。
X-Pro3から搭載されたフィルムシミュレーション「CLASSIC Neg.」は“写ルンです”で撮影した質感を再現してくれる。それまで写真館などで使いやすいプロ仕様のカラーネガをイメージしていた“フィルムシミュレーション”の機能を、アマチュア用フィルムの味わいに近づけたのが「CLASSIC Neg.」だ。グレインエフェクトで粒状感を足せばフィルムで撮影したノスタルジックな写真を撮ることができる。写真表現の中でフィルム感を求めたい人たちにはうってつけのフィルムシミュレーションで、現在X-Pro3、X-T-4、X-100Vに搭載されている。
「CLASSIC Neg.」を使いたいからX-100Vを購入した、というブログ記事もあるくらい魅力溢れる設定だ。
「フィルムを使うことをしばらく忘れさせてくれてるX100V。」- 記憶カメラ
「CLASSIC Neg.」誕生の話は富士フィルム公式サイト「X-Pro3 Stories, #2 銀塩フィルムから学ぶ」から。
カラーバリエーションは3色で、ブラックとデュラテクトコーティングをほどこしたDRブラック、DRシルバー。シチズン時計株式会社社のダイヤモンドライクカーボン(DR)を採用したデュラテクトコーティングは傷がつきにくく、スタンダードなブラックは使い込むほどエイジングされていく仕様になっている。
Pro3にデュラテクト加工を採用した経緯は「X-Pro3 Stories, #3 古びの美学」で紹介されている。
最後の最後までどのカラーを買うか迷ったものの、ブラックを使い込める自信もなく、デュラテクトコーティングにはかなりのこだわりと難易度の高さをクリアするための試行錯誤があった経緯を知り私はDRシルバーを迎えることにした。
ただ、開発者トークの中で「コーティングにこだわったからこそ、X-Pro3はケースにしまわずガンガン振り回して欲しい。」という思いを聴き、私は外にでるときは必ずX-Pro3を首からぶら下げるようにしている。はっと思ったときにシャッターを切るための道具としてX-Pro3は最高にかっこいい。「X-Pro3を使ってるぞ」という写真に対してのこだわりといつも一緒にいられるからだ。
ちなみにDRコーティングの2機種は専用のクロスも付いてくる。デュラテクトコーティングの性質上指紋が付きやすいからこその配慮。本当に指紋や汚れが付きやすいのが事実だが、汚れが目に見えるからこそ大切に使おうを思わせてくれるX-Pro3を、私は本当に相棒として好いている。
冒頭で紹介した背面モニターについては「X-Pro3 Stories #4 踏み絵」をご覧いただきたい。これを読めば富士フィルムがいかに写真を撮ることにこだわりたいかが伝わってくる。
こんなにも“写真を撮る”ことに貪欲なカメラがデジタルの技術を駆使して、どんな場所でもどんなときでも写真を撮るためのフォーカスシステムを搭載している。第4世代のセンサーとプロセッサの性能を最大限に引き出すために開発されたフォーカスシステムについては「X-Pro3 Stories #5 ラインを越えて」を参照いただきたい。
「写真を撮る」ということの楽しみ方をとことん追求したデジタルカメラ。長々と紹介したものの、シンプルにフィルムカメラで写真を撮ったときになにが撮れているかわからない、失敗だって思い出になる、そういった楽しみ方を教えてくれるカメラがX-Pro3なんだと思う。
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